「ヨーダ語概論」
Description of Yodish


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以下は英語で書かれたヨーダの話す英語(ヨーダ語)についての小論文を管理人が翻訳したものです。まだ未校正ですがとりあえず全文公開します。英語版(原文)はここです。 (現在リンク切れ)
 なお[ ]の部分は訳者の補足説明です。
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Description of Yodish
 by Unknown Author

「ヨーダ語概論」
 作者不詳 マスターワン訳

 これは私が言語学2の授業のために書いた論文である。この論文は、ヨーダのような話し方をするためのテキストとして書かれたものではない。またこの論文は私の言語分析の初歩的能力にのみ基づいている。映画からの直接の引用を除いて、以下のいかなる文章もルーカスの著作から取られたものではない。

 地球から何光年か離れた湿地帯の星がヨーダの家である。この二本足の爬虫類のような生き物と彼の家はジョージ・ルーカスの創造物である。ヨーダは英語を話すが、彼独特の文法構造を示している。

 ヨーダの文法はそのセンテンスの主旨に依存している。そしてほとんどの部分で彼は彼の文法にしたがっているけれども、彼を動かす技師、もしくは台本作者は、この研究の主旨を別にすれば、少しの間違いをしている。このような間違いの集合は唯一「ヨーダ」にのみ属するものだろう。総じて、ヨーダはかなり標準的な文法に従っている。彼の独特の文法を、今後は「ヨーダ語(ヨーディッシュ/Yodish)」と呼ぶことにしよう。いかなる文法もそうであるように、それにも例外がある。ヨーダの口から発せられる表現法における文法規則を詳しく記述することが私の目的である。私は彼の言葉に含まれる文の型、表現構造、そしてその規則の例外について論じるつもりである。簡略化のために、私は文章のそれぞれの部分を次のような省略形に縮める。主語はS、動詞はV、従属動詞[助動詞のことか]はdepV、形容詞はadj、副詞はadv、接続詞はcon、前置詞はpp、直接目的語はDO、間接目的語はIO、全体としての目的語はO、前置詞の目的語はObP、主格の叙述名詞あるいは叙述形容詞を受けるときに使用する連用修飾語はPM、疑問文はI、所有格はposs、動詞の否定形はneg、そしてある句が言葉のそれぞれの部分の代わりに使用される場合には、その前にpを置くことによって特定する。例えば、直接目的語として働く句はpDOというように。

 ヨーダは四つの基本的な文の型を使用する。それには命令文、疑問文、平叙文があり、そして第四の構造は、常にではないがしばしばヨーダ語の構造に例外であるところの、標準的な英語固有の構造[つまり普通の英語構造](以後SEVと呼ぶ)であると私は考える。

 第四の文、つまりスターウォーズ三部作でヨーダが出演している場面におけるSEV構文について初めに議論しよう。SEV構文は非ヨーダ語の話者がヨーダを理解することが特に重要なときに、ヨーダによって使用される。そのサンプルとなる大きな言語群が存在し、すべてではないにしろそのほとんどがヨーダ語に翻訳できる。それらの多くは、非ヨーダ語の話者であるルーク・スカイウォーカーから発せられた疑問への返答に見られ、その結果、その返答がSEV構文となっている。このように考える以外は、これらの特定の文章がその筋の内容の重要性を別にして、ヨーダ語として話されるのではなくSEV構文として話される理由はないように思われる。観客が[ヨーダ語に]無知であるのと同様に、ルークもそのキャラクター上それに無知であることが、これらの特定の文章を脚本化するときに特別な考慮を払わせているのだと思われる。著者の研究方法においては、これらのサンプルは考察の対象とならない。
 平叙文はいかなる言語においても最も一般的な文章である。そのことはSEV文に劣らずヨーダ語においても真実である。ヨーダ語はSEV構文と同様の言語の部品を使用し、同様の言語構造を使用している。例えば、前置詞句や、表現の様々なところで使用される関係詞節、従属句と独立句などを含んでいる。またヨーダ語は複雑さの程度によって、単文、複文、重文、複-重文といった異なる構造を備えている。

 ヨーダ語を考える上で一つの興味深い点は、話者が主語を必要とせずに、または動詞を必要とせずに、またはその両方を必要とせずに、文章をつくることができるという点である。そのような文章の大多数は主語あるいは動詞のどちらかが修飾語とともにおかれている。主語のみの文章の一つは"Great warrior" (Adj + S)であり、そのような部品が欠如したパターンは動詞のみの文章でも見られる。例えば、"Cannot get your ship out" (depVneg+V+poss+DO+Adv)である。彼が主語と動詞が共に欠如した文章をつくるときにはもっと複雑になる。例えば、"Much anger in him like his father" (Adj+PM+Pp+ObP+con+poss+O?)がそうだ。この構造のもう一つの例は、"Only different in your mind" (Adv+Adj+pp+poss+ObP)という文に見られ、これはSEV構文で表せば"It is only different in your mind"である。この文章において、全体としての句は連用修飾語の働きをしている。これらの構文の大多数は、SEV構文でならば連用修飾語として機能し、連用修飾語としての位置を占めるだろう。また、ヨーダ語の多くは、やたらと'yeses'や'hmmmms'や'awwws'といった言葉で中断させられるということに注意しておくこともいくらか重要である。これは単なる中断の仕方であって、いかなる決定的な用途も持ち合わせていないことは明らかである。

 ヨーダ語のサンプルから提供されるより単純な文章の一つは、直接目的語を含んだ単文である。多くの場合、直接目的語は単純な句から始まり、普通のSEV構文の目的語の位置にそれが繰り返される。一つのサンプルをヨーダからとってみると、"Yoda, you seek Yoda" や"Rest, I need rest"があり、両方ともDO+S+V+DO(繰り返し)のパターンに従っている。しかし、これは我々がSEV構文で、"I want the dog" もしくは "Suzy bought a necklace"などと、修飾語を使用せずに言う程度の複雑さの場合にはふさわしいが、もし動詞の修飾語を、副詞もしくは他動詞を追加することによって加えたら、同じパターンで続けることはできない。前述の文章はヨーダ語で再表現すると "the dog, I want the dog"もしくは"A necklace, Suzy bought a necklace"となる。もし、修飾語が加えられたら、例えば、"Friends you have there"のように副詞として「there」が加えられた場合(DO+S+V+Adv)には、後ほど議論するもう一つの構造が現われる。しかし、我々は、副詞の配置が誤っていることに気付くだろう。もし、"Found someone you have..."と、「have」が従属動詞として加えられた場合のように、従属動詞が動詞に加えられるなら、次で述べる構造に従った(V+DO+S+depV)の構文となる。

 ヨーダ語におけるもう一つのより単純な構造は動詞と従属動詞[助動詞など]を含むものである。このような場合には、その二つの動詞はそれを取りまくほかの言語部分によって隔てられている。ヨーダ語においては、この構造は単文ではない独立節の場所でさえいくつかのサンプルが存在する。『ジェダイの帰還』において、ヨーダは"...suffer your father's fate you will" (V+poss+poss+DO+S+depV)と言う。『帝国の逆襲』では"Take you to him I will" (V+DO+pp+ObP+S+depV)と述べ、加えて"Consume you it will..." (V+DO+S+depV)と述べている。このパターンの首尾一貫したいくつかの例を考察してみると、これが標準の構造で、例外ではないということが決定されるだろう。このようにして、従属動詞と規則動詞が使われるこの標準のパターンでは、それらは目的語と主語、そして目的語と主語を叙述する形容詞によって隔てられる。前置詞句は二つの動詞のうち第二の動詞の後に従うか、SEV構文の場合と同じようにその前置詞句が修飾する言葉の部分にしたがって適当な位置で第一の動詞の後の文に入る。この独立節は、能動態[?(active)]の動詞が主語の前に置かれない限りは、たいてい主語と従属動詞で終わる。この規則を適用して、文章をつくると、"Buy the dog John will for Sue," あるいは "Help you I would if I could"となるだろう。しかし、主語についての連用修飾語の使用を伴った接続詞に適用されるときには、従属動詞と第一の動詞との分離の規則は完全に残されるが、わずかに逆になる。連用修飾語は副詞が存在する場合を除いて常にその構造の残りの部分に先行し、独立節の前に置かれる。例えば"... then a Jedi will you be" (Adv+PM+depV+sub+ state of beingV) の場合のように。この使い方においては、V+O+S+depVの規則が従属動詞と主となる動詞の役割を逆転させたということを意味している。我々はこのような構造のさらなる例をヨーダ自身から見ることができるが、[さしあたって]このような規則の応用として、我々は次のような文章をつくることができる。"A teacher will I be" (PM+depV+S+V)もしくは"Soon parents will Sharon and Eric be" (Adv+PM+depV+S+V)。

 しかしながら、時に連用修飾語は従属動詞をまったく必要とせず、be動詞(state-of-being verb、以後beingVと呼ぶ)のみを必要とする。この場合には、新しい規則が必要である。繰り返すが、ヨーダ語においては、修飾語は、順序が逆になっていたり、なっていなかったりする主語とbe動詞の前に置かれなければならない。だから、我々はヨーダから"...reckless is he" (PM+beingV+ S)という節と同じく"Strong you are..." (PM+S+ beingV)というような[主語とbe動詞が逆になった]節をも耳にするのである。連用修飾語が形容詞の場合には、その修飾語を修飾する前置詞句は、"Strong you are in what you have learned" (PM+S+ beingV+pAdj)のようにbe動詞の後に続く。もし、主格の叙述名詞である連用修飾語があり、それが次には形容詞によって修飾されるなら、それが単独の形容詞であろうと形容詞として働く句であろうと、その形容詞は直接に主格の後ろに続く。例えば、"A domain of evil it is" (PM-nominative+pAdj+S+beingV)のように。これらの連用修飾語のルールを使った応用としては、"Your sister is she" もしくは "Blue is the house."のような文章が見られるだろう。複合的な連用修飾語がある場合には、その一連の語は分離させられるということに気付くことは重要である。唯一、単独の修飾語のみが節の初めに置かれ、複合的なものはS/V構文の後に置かれるのである。このような例としては、 "Sick have I become, old and weak" (PM+depV+S+beingV+PMseries) とか "Unexpected this is, and unfortunate" (PM+S+beingV+remainder of PMseries)のような構文がある。

 このことは私[の関心]を副詞あるいは副詞句の問題へと移す。副詞は、それが"When gone am I..." (Adv+PM+V+S) や "...a long time have I watched" (pAdv+depV+S+V)というサンプルで使用されるような節の場合に始めに置かれる。これらの構造は、これまでに確立してきた、動詞の分離(depV+S+V)や連用修飾語の配置 (PM+beingV+S)の規則に従っている。だから、副詞が必要な場合においては、その副詞はいかなる節においても初めに置かれ、さらにその他のすべての関係する法則が適用される。

 いまや、我々は動詞の否定形と関連したdoの問題へとたどり着いた。否定文においては、単独動詞の配置規則と同じく連用修飾語の規則も役立たない。主語で節が始まり、動詞は目的語に従い、連用修飾語は動詞に従う。SEV構文ではS+'do'+neg+Vとなる場合、その構文は[ヨーダ語では]doの助けを借りずにS+V+negとなる。doは必要ないのである。その動詞は動詞に従うnotによって打ち消される。このようなサンプルはいくつか存在する。我々はヨーダから、"Wars make not one great" (S+V+neg+DO+Adj)や"A Jedi craves not these things" (S+V+neg+pDO)という言葉を聞くことができる。

 否定文はまた、ヨーダ語の平叙文の二つの最終的問題に関係している。ヨーダは先行する独立節全体を否定するようないくつもの言い方を持っている。例としては"I will help you not" や "Size matters not"がある。notの配置の問題を除けば、その構造は間違いであるのか、それとも議論するにはそのデータが少なすぎる構造の代表であるのかどちらかである。しかしそういう事実を別としてみれば、notはSEV構文のヴァリースラングの標準的否定文で最後に置かれる時のように、先行する言葉全体を否定しているようである。これは"look as good you will not" (V(non 'being')+PM+S+depV+ neg)というように、節の中においても同じである。これは前に議論した動詞の分離規則と、動詞がBe動詞でないときに現われる連用修飾語の規則にしたがっている。そのような場合にこの規則を適用すると、我々は、"Always a teacher she was not" (Adv+PM+S+ beingV+neg) とか "Drive Suzy to the mall I will not" (V+DO+pp+S+depV+ neg) とか "Take the dog for a walk Bill will not" (V+DO+pp+S+depV+neg)といった文章をつくることができるだろう。

 最後に、平叙文について、もしヨーダの言う"try"とか私の言う"snicklefritz"というような、何らかのものが存在しないのであれば、その構文は、SEV構文のS+Vのパターンに従ってつくられる。ただし、その動詞は単にisとなり、それはit isn'tを意味するnoによって否定される。その後に、その存在しないもを表す単語が続く。研究サンプルとして、ヨーダによって述べられた"There is no why" (S+V+no+x)を考えてみよう。xは存在しないものを表している。これが私が存在否定のパターンと呼ぶものである。

 ヨーダが彼の構文をつくるうえで間違いを犯しているそれぞれの領域において、様々な場合が存在している。彼は直接目的語を第一に置く規則を、彼がつくろうとしている文章の二つに不適切に適用している。彼は、"My own counsel will I keep ..." (pDO+depV+S+V) と言い、そして "Nothing more will I teach you today" (pDO+depV+S+V+O+ Adv)と言う。従属動詞と動詞が直接目的語と間接目的語を伴った主語によって分離されるという規則と、時間を表す副詞の規則に従えば、これらの文章は、不適切に表されている。それらは"Keep my own counsel I will..." (V+pDO+S+depV) と " Today teach you nothing more I will" (Adv+V+IO+ DO+S+depV)として表現されるべきだろう。ヨーダは、『帝国の逆襲』において動詞の分離についての間違いをしている。"Through the force, things you will see..."というのがそうである。もし、ヨーダ語の規則が正しく適用されるなら、この文章は"Through the force see things you will" (pAdv+V+DO+S+depV)となるべきである。ヨーダはまた、連用修飾語の使用法においても間違いをしている。ある箇所において、彼は、SEV構文のS+beingV+PM形を彼自身のPM+S もしくは V+V もしくは Sの構文の代わりに使用している。彼は"Now worse are matters" (Adv.+PM+beingV+S) もしくは "Now worse matters are" (Adv+PM+S+beingV)−これらは二つとも受け入れられる−と言う代わりに、"Now matters are worse" (Adv+S+beingV+ PM)と言う。ヨーダが生み出した特定の文章では、複数の規則が破られている。"Anger, fear, aggression, the dark side of the force easily does flow"という文章がそうである。しかしこの場合には例外が設けられているのだろう。[結局、]ヨーダが発する言葉を網羅し、修飾語・do・動詞の分離・副詞の配置などの規則を扱うすべての所与の規則に適用できると考えられる手法は存在しないのである。

 疑問文は議論するのにはより小規模な部門である。ヨーダ語の疑問文は五つの基本的な領域に分けられる。私が注意を喚起したい第一の領域は、定義するのが最も単純なものである。それは、平常文の場合のように、ヨーダ語においても、ただ一語だけが必要であり、それが言葉のどの部分に向けられているのかということが問題とならない場合である。このような場合では、その[使われる]単語は動詞であり、例えば、好奇心旺盛な声で"Looking?"と言われる。いくつかの例がこのようなパターンに従って得られる。Ugly? You? Going? Here?などである。

 もう一つの疑問文は、疑問文が主語を修飾する語−SEV構文では主格の叙述名詞、あるいは叙述形容詞と呼ばれる−についてたずねるときに表現される場合である。このような場合に使用される疑問は、「連用修飾語+state-of-being verb+主語」(PM+beingV+S)と表現される。この問いかけも再度イントネーションに依存している。"So certain are you?" (PM+beingV+S)と"Ready are you?" (PM+beingV+S)は共にこのパターンに従っている。これを証明するには最小限の資料しかないので、疑問の余地はある。しかし、 私はこの資料が、限定されているとはいえ、標準の型を代表しているものと仮定する。であるから、もし私がヨーダ語で、何かがxであるかどうか尋ねるなら、私はこの形に従うだろう。この規則に従えば、私が、ルークはジェダイなのかと尋ねるならば、"A Jedi is Luke?"と言うだろう。Zoeが先生であるか尋ねるなら、"A master teacher is Zoe?"と言うだろう。そして、あなたが食事を切り上げるかどうか尋ねるなら、"Finished with your meal are you?"と言うだろう。

 第三の疑問文はwho, what, where, when, why, howなどの疑問語を伴う疑問詞で始まる技法を含むものである。それらの語のひとつが構文の初めに置かれる基本的構文は、「疑問語+動詞+主語」(I+V+S)の後に、その主語もしくは動詞を修飾するほかの様々な構文が従うというものである。もし、疑問文が主語を叙述し、連用修飾語もしくは目的語を必要とするならば、この基本的な構造に「state-of-being verb+ 連用修飾語/直接目的語」(I+V+S+depV+ PM/DO)が続く。例えば、"Why wish you become Jedi?"(I+V+S+depV+ PM)や "What know you of ready?"(I+V+S+depV+ DO)のように。そしてまた、否定文と同じく、従属動詞としてのdoが追い出され、動詞を指示するものとしてのtoが取り除かれる。もし、その文が動詞に関する質問に向けられているならば、それに続いて、副詞の構造が、疑問詞と動詞の間に限り使用される。例えば、"How far Jedi was he?"のように。その副詞は疑問文を除けば否定文にのみ見られるものと同じ位置を保持する。そのようにして、その副詞を含む構文は「疑問詞+副詞構造+動詞+主語」(I+Adv+V+S)となる。

 命令法は議論するサンプルが限られているもう一つの例である。またもや限られた資料のみがこの場合に利用可能であるから、議論は憶測の域を出ない。[しかし]私はこれらの資料をヨーダ語の代表として扱いたい。そしてさらに、平叙文と疑問文の場合と同じように、ここにも異なる事例があり、その事例には二つの部類が存在する。第一の部類はmustを使用する場合である。この変数が平叙文を命令文に作り変えるときに使用される場合、この構文はSEV構文における同種の構文と同一のものになる。Mustが順序正しく使用されるいかなる場合でも、そのパターンはS+must+V+objectである。我々は、この構造を四つの例に見ることができる。四つのうち三つはこのパターンに従い、それは"You must complete the training"(S+must+V+O)、 "You must unlearn what you have learned" (S+must+V+pO) そして "You must feel the force around you"(S+must+V+pO)である。我々がこの規則のちょうど輪郭だけを適用するならば、次のいくつかの文章がヨーダ語には存在する。それは"Leia must find the planet" (S+must+V+O)、 "Han must rescue Chewbacca" (S+must+V+O) そして "He must find his father" (S+must+V+O)である。四つ目のサンプルでは、目的語が存在せず、動詞が否定されている。否定文における否定の文章とは違って、その否定語はSEV構文における動詞の前に置かれ、S+must+neg+Vとなる。この構文は"You must not go" (S+must+neg+V)という文に例示されている。これを応用すれば、この構文は以下のオリジナルの文章に見ることができよう。"Larry must not eat" (S+must+neg+V)、"The boy must not run" (S+must+neg+V)、"You must not sleep" (S+must+neg+V)などである。

 五つのサンプルが命令文の第二の部類には存在している。その部類においては、you[会話の相手]が理解されている。この部類はたいてい、指令が直ちに実行されるような相手に向けた命令である。五つのサンプルうちの四つはヨーダによって話された以下の文章と同じ構文に従っている。"Feel the force flow, yes" (V+pDO+Affirmative)という構文である。ヨーダはしばしば、'yes'もしくは'no'といった言葉を命令の実行についての是認や否認を知らせるために使用する。この部類は副詞が使用されるようになると変更される。"Now the stone, feel it" (Adv+DO+V+繰り返しのDO)という文章のように、副詞が必要なときには、その副詞で文章が始まり、直接目的語は動詞の前に記載され、その後でまた繰り返される。ただしそれらは主語としてのyouが理解されている場合においてのみである。これを応用すれば、この部類の第一の組はSEV構文におけるものと同様である。"Lift the box" (V+DO) や "Get the dog" (V+DO)といった文章がまったく可能である。是認の言い方は、"Pull the cord, yes" (V+DO+affirmative) あるいは "Kick the ball, no" (V+DO+negative approval)といった場合に適用されるだろう。後者の例においては、ボールが蹴られる方法についての否認を指し示すものは何もない。第二の組においては、副詞の追加[の仕方]はSEV構文とは少し異なるが大きな違いはない。我々は、"First the girl, kiss her" (Adv+DO+V+restatedDO) あるいは "Quickly the dog, buy it" (Adv+DO+V+restatedDO)のような文章をつくることができよう。

 ヨーダ語、つまりスターウォーズにおけるヨーダの話す言語は、我々の標準の英語と大変似ている。彼が使用する単語は我々が使用するものと同じである。それらは同じ目的のために使用され、また会話の同じ部分で使用されるようにできている。彼の言語は[我々と]同じ文章構造を持ち、もし十分に適用されるなら、無限の組み合わせが可能であるように思われる。ヨーダ語は、乱雑なSEV構文のように単に我々を悩ます気まぐれな文法ではない。クリエイターであるジョージルーカスによって意図的に構想されたのではないにもかかわらず、そこには応用可能な標準型の規則が存在するのである。もしその規則が存在しないとしたならば、私が言及した[ヨーダ語の]間違いはおそらく存在しないし、SEV構文を明快に理解するために使用されるものと同じような、文章の四分類も存在しないだろう。これらの規則にはいくつかの例外がある。しかし、我々はヨーダ語の規則を応用できるし、それで毎日の言語をつくり出すことができる。それゆえ、ヨーダ語は合理的な言語なのである。あるいはヨーダ語で言うなら、"A legitimate language is Yodish, yes. Hmmm."(「そう、合理的な言語なのじゃ、ヨーダ語はな、ムム…」)

 

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